第13回「ハンガリー、スロヴェニア、スイス、クロアチア、英国」では以下の内容を学んでいきます。
=「ハンガリー、スロヴェニア、スイス、クロアチア、英国」で扱う主な内容=

ハンガリー、スロヴェニア、スイス、クロアチア、英国の歴史、主要ぶどう品種、ワイン法など
●マイナーな範囲こそ的を絞って覚え、着実に得点にしていきましょう。
・ハンガリー
→世界三大貴腐ワインの「トカイ」を中心に学習
・スイス
→フランスに面しているスイスロマンド地方を中心におさえる
・スロベニアとクロアチアは2ヶ国1セットで覚える
→両国とも旧ユーゴスラビアから独立しているので歴史や文化が似ているため。
・英国
→冷涼な気候を生かしたスパークリングワインの銘醸地
【Point】トカイワインの製法とタイプ
エッセンシア
貴腐ブドウのフリーランジュースを使用して自然発酵させる。
※フリーラン=破砕後に圧搾を行わずタンク内自重で自然に流出した果汁
量が少なすぎて出来ない年もあり、出来る年でも1haでやっと500mL×2本のエッセンシアしかできないほど大変貴重
アスー
・粒摘みした貴腐ブドウを、粒あるいはペーストの状態で、通常の辛口白ワイン(貴腐化していないブドウから造ったワイン)に加えて醸造する。
・以前は、残糖に応じて、3~6 プットニョシュと等級分けされたが、2013年にワイン法が改定され、3, 4 プットニョシュのカテゴリーが廃止、残糖120g/ℓ以上のものが、「トカイ・アスー」となった。
・残った5, 6 プットニョシュはラベル記載の義務はなくなったが、6 プットニョシュと記載する際は、残糖150g/ℓ以上が必要。
サモロドニ
・貴腐ブドウのみの粒摘みではなく、貴腐化したブドウと貴腐化していない健全なブドウを房で収穫して一緒に醸造する。その際の貴腐の割合によって、辛口や甘口に仕上がる。
・サモドロニはスラブ語で「自然のままに」という意味。
・辛口ワインは「Szárazサーラズ」、甘口ワインは「Édesエーデシュ」と表記する。
サーラズ・サモロドニ:辛口のサモドロニ
エーデシュ・サモロドニ:甘口のサモドロニ
【Point】 スイスで最重要の箇所!特別A.O.C.ワインを完璧に覚えよう!
ヴァレー州
Flétrieフレトリ→甘口ワイン。
Vin des Glaciers ヴァン・デ・グラシエ
Dôleドール→ピノ・ノワールとガメイを85%以上使用する、赤ワイン。
ヴォー州
Salvagnin サルヴァニャン →ピノ・ノワール、ガメイのどちらか、あるいは両方を使用したワイン。
ドイツ語圏
Federweiss フェーダーヴァイス →ドイツ語圏で、グラウブルグンダー=ピノ・グリから造られる。
スイス全土
Oeil-de-Perdrix ウイユ・ド・ペルドリ →ピノ・ノワールから造られるロゼ。
【Point】イギリスの原産地名称登録数4つ
◆原産地名称保護:P.D.O =Protected Designation of Origin
・現在の登録数は以下の4つ。
①English Wineイングリッシュ・ワイン
・イングランドで収穫されたブドウ100%で造られたワインの表示。
・スパークリングワインは、トラディショナル方式で澱と共に9か月以上瓶内熟成などの規定がある。
②Welsh Wineウェルシュ・ワイン
・ウェールズで収穫されたブドウ100%で造られたワインの表示。
・スパークリングワインは、トラディショナル方式で澱と共に9か月以上瓶内熟成などの規定がある。
③Sussex Wineサセックス・ワイン
・イングランドのサセックス地方で収穫されたブドウ100%で造られたワインの表示。
・州規模のP.D.O.として初の認定であった。(2017年認定)
・収穫は手摘み、最大収量、アルコール度数、使用品種などの規定がある。
・スパークリングワインは、トラディショナル方式で15か月以上(うち澱と共に12か月以上瓶内)熟成などの規定がある。
④Darnibole Wineダーニボール・ワイン(別名Darnibole Bacchus Wineダーニボール・バッカス・ワイン)
・イングランドのコーンウォール州にある生産者キャメル・ヴァレー・ヴィンヤードの単独所有畑「ダーニボール」のブドウ100%で造った辛口の白ワイン。
・使用品種はバッカスのみ、収穫は手摘み。
・2015年認定。
※イギリスは2020年にEUを正式に離脱したが(Brexit)、EUのワイン法がその後も踏襲されている。
【最終チェック!】「ハンガリー、スロヴェニア、スイス、クロアチア、英国」の「SASAKI’sEYES」

~ハンガリー~
・首都は「ドナウの真珠」と呼ばれるブタペスト
・中央にはドナウ川が南北に走り、西から順に、オーストリア、スロヴァキア、ウクライナ、ルーマニア、セルビア、クロアチア、スロヴェニアと国境を接している
・気候:大陸性気候(夏と冬の気温差が特に大きい)
1737年トカイのブドウ畑の格付けが行われる(原産地呼称制度を導入する先駆けの1種)
1867年ハプスブルグ帝国解体により、ハンガリーのワインの生産と輸出の扉が開かれ、フランス、イタリアに次ぐ、世界第3位の生産国になる。
1875年フィロキセラによる被害を受ける。
1949~1970年 ビエト連邦による支配を受け、ワインのインフラと市場が潰れ、国営化が進む。
1970年代半ば~
・生産量の約60%がソ連への輸出となり、西側諸国へは15%ほどであった。
1989年 共和政へ体制転換。外国資本(特にトカイではフランス資本)により近代的なワイン造り、および技術革新が進み、品質が飛躍的に向上。
2004年 EU加盟。
・栽培面積の2/3を白ワイン用ブドウ品種が占めている。
・近年、国際品種が増加しつつも、栽培面積の約6割がハンガリーの地元品種である。
ブドウ栽培面積順位(2018年)
〈白ブドウ〉
1 Biancaビアンカ
・病害に強く耐久性が高いため栽培が容易。この10年で人気が高まった。
2 Cserszegi fűszeresチェルセギ・フューセレッシュ
・ドナウ川より西側のパンノニア平原の主要品種。
3 Furmintフルミント
・トカイワインの主要品種。
4 Olaszrizlingオラスリズリング
5 Chardonnayシャルドネ
〈黒ブドウ〉
1 Kékfrankosケークフランコシュ
=Blaufränkischブラウフレンキッシュ(オーストリア)
=Lembergerレンベルガー(ドイツ)
・全ブドウ中1位。黒ブドウ中約40%。
2 Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニヨン
3 Merlotメルロ
4 Zweigeltツヴァイゲルト
5 Cabernet Francカベルネ・フラン
・2009年に発効した新しいEU規則に沿って、ハンガリーワインは2011年から以下の3つに分類されている。
◆原産地呼称保護 (PDO): OEM
◆地理的表示保護 (PGI): OFJ
◆地理的表示なしワイン : FN
世界三大貴腐ワイン「トカイワイン」
~スロベニア~
・緯度は北緯45~47度でボルドーとほぼ同じ。
・イタリアのトリエステ(フリウリ・ベネツィア・ジューリア州都)の東側に位置し、イタリア及びオーストリアとアルプスを挟む形で国境を接している。
・単一品種を使用したワイン造りが主流、白ワインの生産量が多い。赤ワインの大部分が、イタリアの国境沿いからアドリア海沿岸の地中海性気候のプリモルスカ地域で生産される。
◆気候:
プリモルスカ地域:地中海性気候(イタリア国境沿いとアドリア海沿岸)
ポドラウイエ地域:大陸性気候(北部のハンガリー平原)
ポサウイエ地域:半大陸性気候(南東部)
主なブドウ品種
1 Laski Rizling ラシュキ・リーズリング Welschrieslingヴェルシュリースリングと同一品種
2 Refoškレフォシュク
3 Chardonnayシャルドネ
4 Sauvignon(Blanc)ソーヴィニヨン
5 Malvazijaマルヴァジア
おさえるべきシノニム
→Sivi Pinotシヴィ・ピノ=Pinot Grisピノ・グリ
→Modra Frankinjaモドラ・フランキニャ=Blaufränkischブラウフレンキッシュ
ワイン法と品質分類
・2008年にEUの基準に沿って、PGI、PDOが導入された。
・現在ワイン産地として認められているのは3地域で、その中に9つの統制保証原産地区がある。
全ワインの7割がPDOにあたる。PDOではなく、スロヴェニアで古くから使われてきた「ZGP」として販売されることが多い。ZGPの中で、伝統的に造られているワイン「PTP」が4銘柄ある。
①Vrhunsko vino ZGPヴルフンスコ・ヴィノZGP:統制保証原産地産最上級ワイン
②Kakovostno vino ZGPカコヴォストノ・ヴィノZGP:統制保証原産地産上級ワイン
①②共通:統制保証原産地9地区からのブドウを100%使用、品種および醸造方法も規定されている。補糖・補酸・減酸は禁止。
~スイス~
・EUには加盟せず、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの言語が話される多文化の連邦国家である。
フランスに接している地方が最重要項目。
主なブドウ品種
・代表品種は、白ブドウはシャスラ、黒ブドウはピノ・ノワール、ガメイ。
1 Chasselas シャスラ
=Gutedelグートエーデル
=Fendantファンダン(ヴァレー州)
=Dorinドラン(ヴォー州)
=Perlanペルラン(ジュネーヴ州)
白ブドウの約60%
2 Müller-Thurgauミュラー・トゥルガウ
3 Chardonnay
4 Sylvanerシルヴァーナー
=Johannisbergヨハニスベルグ
=Rhinラン
5 Pinot Gris
=Malvoisieマルヴォワジ
=Grauburgunderグラウブルグンダー
=Ruländerルーレンダー
〈黒ブドウ〉
1 Pinot Noir
=Blauburgunderブラウブルグンダー
=Clevnerクレヴネール
黒ブドウの約40%
2 Gamay
3 Merlot
4 Gamaret ガマレ
5 Garanoir ガラノワール
スイスはEUに加盟していないが、EUのワイン法に則っている。
~クロアチア~
スロヴェニアと1セットで覚える。
・クロアチアの沿岸部は、温暖な地中海性気候、大陸部では夏は暑く冬は厳しい寒さの大陸性気候であり、栽培されているブドウ品種も異なる。
・スロヴェニアとクロアチアの比較
→独立:共に1991年
→EU加盟:スロヴェニア⇒2004年、クロアチア⇒2013年
~英国~
・世界最北端のワイン産地
・英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの構成国が連合した形式の連合王国である
・近年は、気候の温暖化によりブドウの熟度が上がるようになり、イングランドで栽培されるシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエで造るスパークリングワインの生産が伸び、世界的に高い評価を得ている。
スパークリングワイン69%、スティルワイン31%
ブドウ栽培面積順位(2018年)
1 Pinot Noir
2 Chardonnay
3 Pinot Meunier
4 Bacchusバッカス
5 Seyval Blancセイヴァル・ブラン
【次回講義】
次回は第14回「ルーマニア/モルドバ/ブルガリア/ギリシャ/ジョージア」です。
→第12回「酒類概論、日本酒、焼酎」をおさらいする
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