第14回「ルーマニア/モルドバ/ブルガリア/ギリシャ/ジョージア」では以下の内容を学んでいきます。
=「ルーマニア/モルドバ/ブルガリア/ギリシャ/ジョージア」で扱う主な内容=

各地の歴史、気候風土、ワイン法、主要ぶどう品種など。
ルーマニアとモルドバは同じ歴史をたどっているので、2ヶ国1セットで覚える
→文化、料理、ぶどう品種も似ている
ブルガリアは東欧では珍しく国際品種が多い、土着品種もあるので、他国との比較がしやすい。
ギリシャは土着品種が多いのと、エーゲ海の大小様々な島からもワインが造られていることに着目。近年国際的にも評価の高いワインが生産されている。
ジョージアは考古学的にワイン発祥の地とされている。世界的にも一大ムーブメントになっている理由は2つ。
→世界文化遺産にも登録された「クヴェブリ製法」と「オレンジワイン」を中心に勉強をすすめよう!
【Point】クヴェヴリで発酵を行う方法(伝統的方式)
・果汁、果皮、茎、種を一緒にした「Chachaチャチャ」をクヴェヴリに入れて野生酵母で発酵(20~40日間)させ、果帽(かぼう)が沈むと蓋(ふた)をして熟成させる。
・産地により手法は異なるが、主要産地のカヘティでは、セラー(Maraniマラニ)で、木製の槽(Satsnakheliサツナヘリ)を使ってブドウを踏み潰す。
・この手法により、ある程度のタンニンが抽出され心地よいブーケや味わいを含むものに仕上がり、これがオレンジワインの原点である。色は黄金色から琥珀色の色調で、ジョージアでは「アンバーワイン(琥珀色のワイン)」と呼ぶ。
・果皮のマセラシオンの期間は、白ワイン5~6か月、赤ワインは1か月程度。
※ジョージアワイン全体でクヴェブリ醸造によって造られるワインは20%程度に過ぎない。
【Point】オレンジワイン(アンバーワイン)とは?
現在、日本を含む世界中で造られているオレンジワインであるが、ワイン法で定められているものではなく、明確な定義が存在しない用語である。しかし、大きくわけて以下の3つのルールが存在する。
➀白ブドウが原料であること。
➁果皮と種子を果汁に漬け込むこと。(スキンコンタクト)
③天然酵母を用いること。
つまり、オレンジワインとは「白ブドウを原料に、赤ワインの醸造フローを辿ったワイン」ということ。
さまざまな料理とのペアリングの相性も良いことから、近年世界的に注目を集めている。
【最終チェック!】「ルーマニア/モルドバ/ブルガリア/ギリシャ/ジョージア」の「SASAKI’sEYES」

・ルーマニアとモルドバはセットで覚える。(ソムリエ教本の執筆者が同じ) ・ルーマニアは温帯大陸性気候、モルドバは大陸性気候 主なブドウ品種 ・ルーマニアで栽培されている国際品種は、1位メルロ(全ブドウ中2位)、2位ヴェルシュリースリング、3位アリゴテなど(2017年)。 白ブドウ Fetească Regală フェテアスカ・レガーラ 「高貴な乙女」の意味。栽培面積は全ブドウ中1位。 フェテアスカ・アルバとモルドバ地方のフランクシャの交配品種。 霜やカビへの耐制があり、フェテアスカ・アルバより栽培しやすい。 ボディはしっかりしていて、グレープフルーツや白胡椒のニュアンスが特徴。 Fetească Albă フェテアスカ・アルバ 「白い乙女」の意味。栽培面積は全ブドウ中3位。 生産国はルーマニアとモルドバで、両国の土着品種、モルドバ公国時代から栽培。 リンデンの花を思わせるようなフローラルでエレガントなワイン。 Grasă de Cotnari グラサ・デ・コトナリ コトナリ地方で最も重要な品種。大ぶりの粒で名前も「大粒」という意味。 貴腐ブドウとしての栽培にも向いており、歴史的にトカイワインと並び称された。 Tămâioasă Românească タマヨアサ・ロマネアスカ Muscat Blanc á Petit Grainsと同一品種。 約2000年前に古代ギリシア人によって黒海から伝わり、主に甘口・半甘口ワインに使われる。 黒ブドウ Băbească Neagră バベアスカ・ネアグラ 「黒い貴婦人」の意味。モルドバでは「ララ・ネアグラ」として知られる。 淡いルビー色、国内ではフルーティで軽やかなワインとして楽しまれる。 Fetească Neagră フェテアスカ・ネアグラ 「黒い乙女」の意味。古い土着品種でルーツは不明。 高品質なワインに向くとして、近年多くの生産者の間で注目されている。 グリブドウ (ロゼ向け) Busuioacă de Bohotin ブスイオアカ・デ・ボホティン バジル(ブスイオアカ)の意味から、強い香りが特徴。 Muscat Blanc á Petit Grainsの突然変異から生まれたグリブドウ。 主要な産地 ・ルーマニアワイナリー協会によって区分された8つのワイン産地*がある。 Podișul Transilvaniei ポディシュル・トランシルヴァニエイ ・カルパチア山脈に囲まれ冷たい風から守られる一方標高600m、大陸性で冬は厳しく最も冷涼な地域。 Dealurile Moldovei デアルリレ・モルドヴェイ ・ルーマニア東部、旧モルドバ公国だった地方でブドウ栽培の歴史が古い。 ・面積最大の産地。 ~ブルガリア~ ・バルカン半島で人気がある、発酵させて果実から造る蒸留酒「ラキア」を多く生産している。食前酒として楽しまれるラキアは、ブドウ、梨、ベリーなど様々な果物から造られ、度数は40度以上。 ・栽培面積1位はメルロ、2位はカベルネ・ソーヴィニョン、3位はPamidパミッド(黒)、白ブドウで最大面積の品種はジョージア最大の品種であるRkatsiteliルカツィテリ(全ブドウ中4位)。 土着品種 は2,000を超える土着品種があるとされる。 ・シラーとネッビオーロの交配品種である「ルビン」は試験に頻出 ~ジョージア~ ワイン発祥の地とされている。ジョージアから西へ、トルコ→ギリシャ→イタリア→フランス(マルセイユ)とヨーロッパ全土にワインの歴史が広がっていった。 2013年に「クヴェヴリを使ったワイン造り」がユネスコの世界遺産に登録される。 経済的なロシア依存は強いものの、ワインはより広い国際市場に輸出されている。 ・ジョージアは土着品種の宝庫で、少なくとも525種類あるとされ、栽培面積は95%(国際品種が5%)を占める。地域別栽培面積は、東部のカヘティ地方が72%、西部のイメレティ地方が15%で栽培されている ブドウ栽培面積順位(2018年) 1 Rkatsteliルカツィテリ 2 Saperaviサペラヴィ 3 Mtsvane Kakhuri ムツヴァネ・カフリ 4 Tsolikouriツォリコウリ ~ギリシャ~ ・300を超える土着品種が存在し、ワイン生産量の90%が土着品種から造られる。 ・栽培面積では、白ブドウ62%、黒ブドウ38%(2015年) ・黒白合わせた1位はサヴァティアノ(白)、2位はロディティス(白)、3位アギオルギティコ(黒)。 Retsina レッツィーナ ・長らくギリシャワインのイメージとなってきた松脂の香りがついた白ワイン。 ・古代ギリシャのアッティカ地方でサヴァティアノ種から造られていた。 ・ワインの劣化を防ぐために、アンフォラの口と蓋の間に松の樹脂を塗って密閉していたため松脂の香りがついたもので、その後、各地に広まった。 Verdea ヴェルデア ・イオニア海にあるザキントス島の伝統的なワイン。 ・酸が強くシェリーのような酸化したフレーバーを持ち、緑がかった色調(イタリア語Verde(緑)が語源)。かつてこの島が数世紀に渡りヴェネツィアの支配下にあったため。 ・PGIとしては「Verdea, Traditional Designation of Zakynthos」が正式名称。 Vin Liastos ヴィン・リアストス ・遅摘みのブドウを1~2週間天日干しにして造られた甘口ワイン。 ・この干しブドウ(Liasta)から出来たワインなので、「ヴィン・リアストス」と呼ばれる。
【次回講義】
次回は第15回「日本」です。
→第13回「ハンガリー、スロヴェニア、スイス、クロアチア、英国」をおさらいする
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