講座参加レポート

ヴィノテラス ワインスクール「オーストリア講座」潜入取材!

お家でゆっくりしながらも楽しめる、ヴィノテラス ワインスクールのオンラインライブセミナー。

今回のテーマは、「オーストリア講座 ~オーストリアの風を感じて~」。
Zoomで開催されたこの講座に、公式取材として参加させて頂きました。この記事では、当日のセミナー内容についてたっぷりお伝えいたします。
講座内でテイスティングしたワインや、参加者からの質問とその回答についても併せてご紹介していきます。

目次
■講座・講師について
■イベントの内容について
■テイスティングワイン6本のラインナップと特徴
■オーストリア講座に参加した感想・印象
■講義中の参加者から主催者への質問&回答
■あとがき

■講座・講師について

今回開催された「オーストリア講座」は、東ヨーロッパに位置するオーストリアという国のワインについての講座。2020年12月11日(金)19時より、Web会議ツールZoomにてオンラインライブセミナー形式で行われました。
参加者は、私を含めて約40名。オーストリアワインに興味のある、ワインラバーの皆さんがZoom上に集まられ、画面越しにも熱気がひしひしと伝わってきます。
初心者からワイン通まで、全国どこからでもお家で気軽に受講できるのは、オンラインライブセミナーならではの嬉しいポイントです。

今回のオーストリア講座の講師を務めたのは、J.S.A.認定ソムリエの岩井穂純さん。
神奈川県湯河原市ご出身の岩井さんは、大学を卒業後は都内のワインバーや高級レストラン勤務を経て、約20年間ソムリエとしてご活躍。
その後は、オーストリアワインインポーターのコンサルタント、隠れ家レストランのプロデューサー兼マネージャーなど多くの経歴をお持ちで、Japan Wine Challenge審査員も務めておられます。
2011年より、AWMB認定オーストリアワイン大使に就任され、現在オーストリアワイン普及団体「AdWein Austria」の代表として、オーストリアワインの普及活動に注力されています。
また、2016年には築地にナチュラルワインとオーガニック食材の専門店「酒美土場」をオープンされるなど、そのご活動は多岐に渡っています。

■イベントの内容について

講師の岩井さんの自己紹介の後は、オーストリアの風景写真を見ながら講義がスタート。
キリスト教と共にワイン産地が発展していったオーストリアのシンボル的な教会、市街地からちょっと歩くとすぐそばにブドウ畑があるのが、オーストリアならではの特徴的な風景だと説明がありました。

今回のオーストリア講座では、サブタイトルにも記されていたように、「オーストリアの風」がキーワード。冒頭から画面越しにオーストリアの風を感じるような気分にさせてもらえたのは、きっと岩井さんの自然なトークのなせる業ですね。

講座の前半では、4つの章に分けて講義が進められました。
第1章では、オーストリアワインの産地の概要について。
オーストリアは、ヨーロッパのほぼ中心に位置していて、ハンガリー、スロベニア、イタリア、ドイツ、スイスなど多くの国に囲まれています。海はなく、地形がハートに似た形をしていることから、ヨーロッパの心臓とも呼ばれる交通の要所です。

最初に、オーストリアのワイン産地は、そのほとんどが国土の東側に集中していて、大きく分けて「ニーダーエステライヒ」「ブルゲンラント」「シュタイヤーマーク」「ウィーン」の4つのエリア、さらに細かく18のエリアに分かれていると解説されました。
次に、オーストリアの地形と土壌についてのお話です。
ボヘミア山塊、アルプス山脈、ドナウ川、パンノニア平原の主な土壌について、私がとても印象に残っているのは、ボヘミア山塊の解説部分です。岩井さんが「3億年前の岩石を感じる風味」と表現されたところが、個人的にとてもツボでした。実際に誰も舐めてみることはできなくても、イマジネーションが膨らみますよね。

オーストリアの風には、パノニアからの暖かい風、アルプスからの冷たい風、北からの冷たい風、地中海からの湿った暖かい風の、計4つの風があり、暖かい風のもたらす豊かな果実感と冷たい風のもたらすフレッシュな酸味が、オーストリアワインの特徴を形成しているというお話も興味深かったです。

第2章では、ブドウ品種の多様性についてのお話でした。
オーストリアのワイン産地では、総栽培面積の3分の2が白品種となっていて、白中心であるのが大きな特徴です。グリューナー・フェルトリーナー、リースリングを中心とする地場品種が多くを占める中、それだけではないハプスブルグ時代から続く地場品種ノイブルガー、ロートギプラー、古くからあるヴェルシュリースリングなど多様な白品種について紹介がありました。
黒ブドウでは、近年ロゼの品種としてよく使われている「ブラウアー・ヴィルトバッハー」が注目されていることにも触れられました。

第3章では、オーストリアが世界有数の自然派大国であるというお話です。
サスティナブルな農業に特化した国として注目度が高まっているオーストリアの最新事情について。伝統的農法、統合農法、オーガニック農法、ビオディナミ農法、公認サスティナブル農法、ナチュラルワインがそれぞれどのようなものであるのか、わかりやすい解説でした。
総栽培面積の13%でオーガニック農法伝統的農法が採用されていることを知れたことで、私はこれまであまり知らなかったオーストリアワインへの関心が高まりました。

第4章は、オーストリアワインの楽しみ方について。
買い方のコツとして、講師の岩井さんは、2,000円台のオーストリアワインのコストパフォーマンスの良さを力説されました。手頃な価格で質の良い味わいが楽しめるのは嬉しい限りです。
また、マリアージュのコツとして、オーストリアワインは様々なジャンルの料理と合わせやすく、特にアジアン料理など多国籍料理との相性が良いというお話でした。

■テイスティングワイン6本のラインナップと特徴

講師の岩井さんセレクトの、白5種類・赤1種類のオーストリアワインが100mlのミニボトルに小分けされ、講義資料とともにクール便で届きます。
今回、オーストリア講座でテイスティングしたのは、こちらの6種類のワインです。

①リースリング ツォービング 2016
生産者:ヒルシュ
産地:カンプタール
品種:リースリング100%
土壌:変成岩

②グリューナー・フェルトリーナー サッツヴィーテル クレムスタール DAC2019
生産者:ミュラー・グロースマン
産地:クレムスタール
品種:グリューナー・フェルトリーナー100%
土壌:変成岩、レス

③グリューナー・フェルトリーナー クラシック 2017
生産者:メーホーファー
産地:ヴァーグラム
品種:グリューナー・フェルトリーナー100%
土壌:レス主体

④グンポルツキルフナー・トラディツィオン 2019
生産者:ヨハネスホフ・ライニッシュ
産地:テルメンレギオン
品種:ツィアファンドラー60%、ロートギプラー40%
土壌:粘土石灰

⑤ヤコビ ソーヴィニョン・ブラン 2018
生産者:グロース
産地:ズートシュタイヤーマルク
品種:ソーヴィニョン・ブラン100%
土壌:オポック(泥灰土)

⑥ピットナウスキ 2015
生産者:ピットナウアー
産地:ブルゲンラント
品種:ブラウフレンキッシュ40%、ツヴァイゲルト25%、ザンクト・ラウレント20%、メルロー15%
土壌:粘土石灰

ブドウ品種の特徴や生産者情報についても資料で確認しながら、1つずつ順番にテイスティングをしていきます。
岩井さんから次々に繰り出される、香りや味わいのコメントと相性の良いおすすめ料理の紹介がとても興味深く、②のワインをテイスティングした時点で、既に終了予定の時間を経過という盛り上がりでした。

■オーストリア講座に参加した感想・印象

今回のオーストリア講座では、講師の岩井さんのお話からオーストリアワインへの熱い想いがとてもよく伝わってきて、オーストリアワインへの興味が高まりました。
オーストリアワインばかりを6種類もテイスティングする機会は初めてでしたが、和食と一番合うワインを探す中でオーストリアワインと出会われたという岩井さんのお話から、「こんな料理を合わせてみたい」というイメージが膨らみました。

特に、④のワイン「グンポルツキルフナー・トラディツィオン 2019」は、おせち料理とよく合うと紹介があったので、ぜひ試してみたいと思います。
⑤のワインのテイスティングでは、「大人のポカリスエット的な塩味のニュアンス」とコメントされるなど、岩井さんのわかりやすい例えと独特の親しみやすい表現を交えながらのトークに、すっかり引き込まれました。
盛りだくさんの情報をわかりやすく解説していただいたので、オーストリアワインの特徴と魅力が理解しやすかったです。

オンラインライブセミナーの魅力のひとつは、質問や感想コメントの発言がしやすいことです。音声はミュート状態での参加がルールになっていますが、参加者の皆さんから質問や感想コメントがZoomのチャット画面に続々と書き込まれ、気軽に意見交換できるのが楽しいですね。
期間限定で視聴可能の動画も共有して頂けるので、充実した講義資料を見返しながらもう一度おさらいができるのも、とてもありがたいポイントです。

■講義中の参加者から主催者への質問&回答


Q1. 温暖化の影響はプラスもしくはマイナスでしょうか?(例えば熟すけど霜や雹の害がひどくなったなど。)

A1. あまり温暖化がマイナスだという話は聞かない。ただし、遅霜やの影響は出てきている。品種による熟し方の違いには、多少影響が出てきている。ヒートアイランド現象もポジティブに捉えられている。


Q2. ①のワイン:石灰のニュアンスがあるような気がしますがどうでしょう?

A2. 上の方に伸びてくる石灰のニュアンスが若干ある。


Q3. ①のワイン:分かる範囲でスキンコンタクト、シュールリー、しているか、その期間はどれくらいか?

A3. スキンコンタクトは絶対にしない生産者。シュールリーについてはわからない。


Q4. ①のワイン:生産者ヒルシュさんの農法の特徴は?

A4. ビオディナミの生産者。自分で草も育てていて、牛のエサから作るこだわりを持っている。


Q5. 岩が強いとより苦くなるのは何故なんでしょうか?

A5. 岩が強いとブドウに対しての水分ストレスが強くなることで。水分を閉じ込めようとして皮が厚くなり、苦くなる。


Q6. ②のワイン:ミュラーさんも、ビオディナミですか?

A6. ビオディナミではない。オーガニック農法。


Q7. ③のワイン:グリューナーのアルコール度数はどのくらいの幅がありますか。

A7. 低いものだと10.5度、11度くらいのものからある。レスは熟すのが早く、あまり度数が上がらない。岩の産地だと摘み取りを遅くすることがあるため、15度くらいまで上がることもある。


Q8. ①②のワイン:グリューナーとリースリングのクローンや台木は一般的にどういうものを使っているか?

A8. 台木には、アメリカ系のものをよく使っている。クローンに関しては、あまり情報として出てきていないため聞いたことがない。


Q9. ④のワイン:この豊かさは、ツィアファンドラー由来なのでしょうか

A9. 豊かなロートギプフラーと、ちょっと引き締め効果のあるツィアファンドラーを混ぜるのがグンポルツキルフナーの伝統。


Q10. ⑤のワイン:ラベルは月の暦ですか?

A10. その年の月の満ち欠けや太陽の出た時など、天の暦を表現している。


Q11. ⑤のワイン:これはロワール系のクローンですか?

A11. いろいろ研究途中で確かではないが、ロワール系ではないと思います。


Q12. ⑤のワイン:天然酵母ですか?

A12. はい、そうです。


Q13. ⑤のワイン:ミネラル感?

A13. オポックの太古が海だった頃の記憶を、香りでしっかり感じられるワイン。


Q14. ⑤のワイン:実際に、土の中に、少量の塩分が残っているのでしょうか?

A14. アルカリ的な成分が強い土壌。ナトリウムの成分は土壌にはあるが、ワインからは塩分は検出されていません。


Q15. 全般:ちなみに今日のワインは全部酒美土場さんでいただける、で正解ですか?

A15. 全て買えます。


Q16. 全般:酒美土場さんではオーストリアのお料理の扱いはないのですか?

A16. ワインショップなので、お料理は扱っていない。オーストリア大使館とのイベントでは、楽しんでもらえる機会がある。


Q17. ⑥のワイン:樽熟成していますか?その場合、樽の種類と熟成期間はどれくらいでしょうか?

A17. 木樽熟成しています。大きな木樽で30ヶ月。


Q18. ⑥のワイン:ジビエ料理との相性はいかがでしょうか?

A18. 合わせなくはないが、この地域ではあまり食べない。牛肉と合わせることが多い。


Q19. 全般:レスとは、山から、飛んでくるということでしたが、どういう風にワインの味に影響するのか?どういうところに分布するのか、もう少し、詳しく、土壌について教えていただけないでしょうか?

A19. アルプスの由来の粒子が細かい成分。石灰を含んだ土壌。保水性が良く、養分が豊富と言われている。養分が方法で、オーガニック栽培に向いたリッチな味わい


Q20. 全般:岩井さんはオーストリアのワインに興味を持たれたきっかけはありますか?

A20. 割烹料理店の友人の料理に合わせるワインを考えた時が、オーストリアワインに最初に興味を持ったきっかけ。それ以来、グリューナの奥深さにはまった。


Q21. 全般:今日のワイン買いに行きます。それぞれおいくらくらいのわいんでしょうか?

A21. ①3,600円くらい、②2,000円切るくらい、③2,000円切るくらい、④2,000円台半ば、⑤2,800~2900円くらい、⑥3,000円台半ば~後半


■あとがき

今回参加させて頂いた「オーストリア講座」では、岩井さんが厳選されたオーストリアワインを味わいながら、しっかりと「オーストリアの風」を感じることができました。
そういえば、2020年12月22日には、木星と土星が重なり合う「グレート・コンジャンクション」が大きな話題となり、これからは風の時代だと言われています。
風をキーワードに魅力を伝えていただいたオーストリアワインが、今後さらに世界的に注目されていくのではないかと、ふと思いました。
オーストリア講座、ぜひ第2弾も企画開催してもらえると嬉しいです。

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