お家でゆっくりしながらも楽しめる、ヴィノテラス ワインスクールのオンラインライブ講座。
今回のテーマは、「モルドバワイン講座」。Zoomで開催されたこの講座に公式取材として参加させて頂きましたので、この記事でセミナー内容についてたっぷりお伝えしていきたいと思います。
講座内でテイスティングしたワインや、参加者からの質問とその回答についても一緒にご紹介していきます。
モルドバワインをはじめとした東ヨーロッパのワインは近年注目されていますが、改めてその魅力を感じられる講座でした。
講座・講師について
今回開催された「モルドバ講座」は、東ヨーロッパに位置するモルドバという国のワインについての講座。2020年12月4日(金)19時よりWeb会議ツールZoomにてオンラインライブ形式で行われました。
参加者は、私を含めて約50名。普段は遠方で足が届かなかったという人も気軽にお家で受講できるのは嬉しいところです。
今回の講座では1時間半のイベントに加えて、講師の遠藤エレナさんが厳選した少し贅沢な価格帯のモルドバワインが6本ミニボトルで楽しめます。
講座を見ながらリアルタイムで一緒にテイスティングが出来るということで、興味を惹かれた参加者の方も少なくなかったのではないでしょうか。
このモルドバ講座を企画し講師を務めたのは、遠藤エレナさん。
遠藤エレナさんのご出身はモルドバで、2011年に大学入学のために来日されました。
2018年にはソムリエ教本にモルドバが加わることとなりましたが、この日本ソムリエ協会教本におけるモルドバとルーマニアの執筆を担当されているのが今回の講師である遠藤エレナさん。
現在は押上「ティーサロン マルツィショール・利三郎文庫」の店主を務めています。ここでは毎週土曜日にモルドバの料理を提供しているそう。
母国であるモルドバのワインはもちろん、料理や文化の布教活動に積極的に取り組んでいるということで、今回のモルドバ講座もワインのみならずその背景やモルドバの歴史まで教えて頂くことができました。
イベントの内容について
続いては、モルドバ講座の内容について大まかに振り返っていきます。
今回のモルドバ講座は、モルドバワインの魅力を伝える、ということでした。
90分間の講座の前半50分ではモルドバ共和国の基本と歴史、ワイン造りの歴史から現在、ワイン法にまつわる背景や産地について。そしてモルドバの文化ともいえる家庭ワインや土着品種、モルドバならではの料理解説。
後半40分では6本のモルドバワインのテイスティングを行い、最後に参加者からの質問を自由に受け付け遠藤エレナさんが答えるという質疑応答タイムを経て終了しました。
モルドバワインの歴史や文化
ブドウ造りの環境として土壌や天候にも恵まれており、肥料もほとんど使わず自然派な傾向があるというモルドバのワイン。
現在でこそそんなモルドバワインをはじめとした東ヨーロッパのワインは注目を集めていますが、80年代には禁酒政策がとられたことで6万haものブドウ畑が崩壊し一時は危機的なものになっていたというのは初耳でした。
最近まで不正表示ワインの横行という問題を抱えていたこと、わずか2年前の2018年にそれぞれのスタイルのワインに独自の名称が与えられたということも講座を受けなければ知らなかったと思います。
もちろん今では不正表示もなくなり、それぞれのワインがモルドバワインとして発展しているといいます。とくに「カオール(モルドバではパストラル)」などは以前の19世紀とは違うスタイルで造られているようです。
お恥ずかしながらモルドバという国にはあまり馴染みがなくその歴史についても詳しくなかったため、モルドバの歴史から辿って頂けたことはかなり嬉しいところでした。
一つ、モルドバの文化として驚いたのは、ワインの消費量がかなり多いということ。なんと水の代わりのように飲むくらいなんだとか。
自家醸造が認められている他量り売りもポピュラーで、自宅のセラーでタンク保存しているというのはかなり新鮮でした。
講師の遠藤エレナさんのご実家でもよくワインを飲まれるようで、ご両親夫婦2人で60Lのワインを1か月で飲み切ってしまうほどだそう。
このようなお話を聞いた後にモルドバワインのテイスティングを行ったのですが、モルドバのワイン造りの歴史や背景を知るのと知らないのとでは楽しみ方も変わるのではないかと感じました。
テイスティングワイン6本のラインナップと特徴
モルドバワインでテイスティングしたのは、6種類のワイン。
セミナー開催時までに、赤・白 各3種類のワインが講義資料とともにクール便で届きました。
今回、講師の遠藤エレナさんが厳選したという6本のモルドバワインはこちらです。
- ASCONI(アスコニ)
コドゥル地方
品種:リースリング100% - KVINT(クヴィント)
トランスニストリア地方
品種:ヴィオリカ100% - FAUTOR(ファウター)
ヴァルル・ルイ・トライアン地方
品種:フェテアスカ・レガーラ100% - CHATEAU PURCARI(シャトー・プルカリ)
シュテファン・ヴォダ地方
品種:ララ・ネアグラ100% - VINARIA DIN VALE(ヴィナリア・ディン・ヴァレ)
ヴァルル・ルイ・トライアン地方
品種:フェテアスカ・ネアグラ60% カベルネ・ソーヴィニョン40% - EQUINOX(エキノックス)
シュテファン・ヴォダ地方
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン40% シラーズ19% マルベック19%
ララ・ネアグラ11% カルメネーレ11%
それぞれの地方のブドウの特徴やワイナリーについても資料で確認しながらテイスティングをして頂きました。
実際にワインを飲みながら特徴をおさらいできたので、普段一人で飲むときよりも格段にそのワインを味わうことが出来たと思います。
今回のラインナップでは1本3000円~4500円ほどの価格帯のワインが揃い、資料もついての講座参加費は4200円(税込)とコスパも抜群。
この価格では十分なほど楽しい時間を過ごせました。
モルドバ講座に参加した感想・印象
今回のモルドバ講座は「モルドバってどんな国?」というところから始まりました。モルドバのワインはどのようなものだったのか、今にいたるまでどのようなワインに変化していったのか、モルドバの歴史の流れを追いながらの解説だったので、かなり理解しやすかったです。
産地や土着品種の特徴をおさらいしつつテイスティングをしたので、「あ、このブドウの話はこういうことだったんだ」とワインを楽しめたのは大きかったと思います。
中でもお気に入りだったのは、赤のCHATEAU PURCARI(シャトー・プスカリ)。モルドバ最古のワイナリーで、土着品種であるララ・ネアグラを100%用いて造られたものでした。
ヴィンテージによってかなり変化があるようで、今回飲んだ2017年のものは厚みがありボディがしっかりした強めのものでしたが、以前は軽めなものだったといいます。是非とも他のヴィンテージのものも飲んでみたいものです。
とくに私は普段一人でワインを飲むとなるとついついお気に入りや馴染みのものになってしまうので、新しい発見が出来た機会になりました。
「ヨード香を感じるかも」「日本料理ならうなぎやあなごが合いそう」といった感想から、「この品種はブレンドされることが多いの?」といった質問まで、チャットなら対面式のセミナーで挙手するよりも気軽に発言できるので、参加者の皆さんの意見を見ながら一緒に楽しめるのもオンライン講座ならではだと思います。
ちなみに講義中はお話を聞き逃すまいと必死に資料にメモを残していたのですが、終了後に録画の動画配信も期間限定で共有して頂けますので、後からゆっくり見返すことが出来るのも助かる点でした。
講義を通して、ただそのままワインを飲むのではなく、そのワインが造られている国の歴史や背景、ワインそのものの特徴などを知った上だとより味わい深いものになるのだと実感しました。
講義中の参加者から主催者への質問&回答
Q1:今回テイスティングしたワインは買えるのでしょうか?
A1:はい。押上「ティーサロン マルツィショール・利三郎文庫」にて販売しています。
Q2:モルドバワインの最大の輸出先は?
A2:旧ソ連での禁酒政策が行われるまでは旧ソ連でしたが、今では中国が主です。知人のインポーターによると、「自分がこのワインを手に入れたい!」と思ってもほとんど中国に取られてしまうということもあるようです。
Q3:今日テイスティングした6本のワインは、モルドバワインの平均的な味でしょうか?
A3:最近ではこのくらいのレベルのワインが増えてきています。とくに輸出向きのワインだと今回のような品質のワインが主です。ただ現地に行くとまだ発展途中なワイナリーもありますが、基本的には現地でも美味しいワインが楽しめます。
Q4:東京でモルドバが楽しめるレストランやバルはありますか?
A4:色々ありますが、常にモルドバワインが置いてあるところというと、亀有の「NOROC(ノーロック)」というお店があります。モルドバワインとモルドバ料理が楽しめます。押上の「ティーサロン マルツィショール・利三郎文庫」でも、毎週土曜日に予約限定で提供しています。
Q5:モルドバの方は軽めのワインがお好みですか?
A5:モルドバ料理は重たいものはなく、お野菜がメインでお魚でも淡水魚が多いので、あまり重いワインは日常的には飲まれません。家庭ワインでも軽やかでカジュアルなものを好み、どちらかというと量を飲むという印象です。
Q6:モルドバワインは例えるならどこの国のワインに似ているでしょうか?白はオーストリア、赤はフランスかなと思いました。
A6:たしかに白ワインはオーストリアワインにも近いかと思います。イタリアワインほど重たくもなく、私はどちらかというとフランスかなと思います。赤ワインでしたら南フランスのイメージです。ボルドーより完熟している感じがありますね。
Q7:今回飲んだASCONI(アスコニ)ではリースリングを用いていますが、普段飲んでいるフランスやオーストリアのものとは違って面白いですね。
A7:モルドバのリースリングはフレッシュに造っているので、ぺトロール香の強いリースリングとは違いが結構出るかと思います。
Q8:現在モルドバワインの最大の輸出先は中国ということでしたが、中国の好みに合わせて味を濃いめに造っているということはあるのでしょうか?
A8:とくにここ数年(2013年以降)はロシアの禁輸政策もあり、輸出先に合わせる傾向が多少はあるように感じます。
最近ではドイツやフランスで開催されるコンクールに、参加者としてはもちろん審査員として参加するモルドバの生産者は多いので、コンクールを通して現在世界中で人気の傾向を取り入れて意識するようになる、ということもあるんじゃないかなと思います。
中国の好みにワインを濃いめに造っている、ということももしかしたらあるかもしれませんね。
あとがき
今回参加させて頂いた「モルドバワイン講座」では、新しいワインを知る貴重な機会になったと思います。これまでモルドバワインをちゃんと飲んだことがなかったため、テイスティングに厳正された6本は自分ひとりでは選ぶことのなかったラインナップでした。
それぞれのワインをただ味わうのでなく、モルドバワインそのものの歴史やそれぞれの造り手のこだわりも一緒に学べたことで、クオリティの高い一本一本のワインをより楽しむことが出来ました。
講座といっても良い意味で小難しいことはなく、それでいてモルドバワインについて十分に知ることが出来た90分。
そのジャンルのワインに詳しい人も詳しくない人も、ワインに少しでも興味がある人であれば楽しめるのではないでしょうか。
次回の講座にも期待が高まるばかりです。