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ブドウの生育サイクルと栽培作業のなぜ ブドウ樹の「仕立て」メリットデメリット

ブドウ樹の仕立て方法には様々なものがあります。
ソムリエ教本では、「仕立て」とは 休眠期に行う剪定作業でブドウ樹の形を整えるとあり、垣根仕立て、棒仕立て、株仕立て、棚仕立ての4つが紹介されています。

この剪定によって芽の数が決まり、大まかな収穫量を予測できるのですが、
数ある「仕立て」からどのようにして栽培方法を決めるのでしょうか。
今回は世界各地で異なる「仕立て」について、少しだけ掘り下げていきます。

  
   目次
  ・ブドウ樹の仕立てとは
  ・仕立てのメリットデメリット
  ・国によって?それとも土壌によって仕立ての方法は変わるのか
  ・生育期に通気性や日光を樹に与えるための重要な作業

 ブドウ樹の仕立てとは

ブドウはブドウ科に属するつる性の植物です。
つる性とはその名の通りつるを伸ばして成長していく植物の事で、
ブドウの他に朝顔や藤、つる性のバラ、ヘチマや胡瓜などがあります。

つる性の果樹は他の樹木と違ってどのような形にも仕立てることが出来るので、
ブドウの場合は冬季剪定の時に樹形を整えます。 
ブドウは、巻きひげを周囲にある植物などに絡ませながら横に広がって育っていくという性質があるので、仕立てをしないと隣の植物に絡んで枯らしてしまったり、剪定をせずに放置すると茂った葉が密集してしまい、日光が当たらず生育不良を起こしてしまいます。

ブドウ樹の仕立ては、これらのトラブルを防ぎ健康に生育させるため、
後の栽培管理をしやすくするために行われる、とても重要で欠かせない作業なのです。

「剪定」の目的
伸びきった枝を切り落とし、翌シーズンの到来に備えること、最も大きな目的は「収穫量のコントロール」。芽から新梢が伸び、ブドウの実がなりますが、剪定することでこの芽の数を減らします。収穫量とブドウの品質は反比例の関係にあるためです。

仕立てのメリット・デメリット

良いブドウをつくる為には日々の管理作業がとても大切です。
前述した通り、仕立てや剪定がされていないブドウ樹の管理は大変な手間となってしまうのは想像に難くありません。

剪定を行うことでブドウ樹の樹勢を整え、収量と品質のバランスを保つことができるのですが、栽培地の気候(テロワール)と品種が仕立てを決める重要な要素となっています。


仕立てには垣根仕立て、棒仕立て、株仕立て、棚仕立ての4種類がありますが、その特徴とメリット・デメリットはどのようなものでしょうか

  • 垣根仕立て

ワイン醸造用ブドウ栽培に広く用いられているのが垣根仕立て。針金と柱を用い、結果枝を地面と垂直方向に伸ばす仕立てで、長梢と短梢選定の2種類があります。代表的な産地はボルドー、ブルゴーニュ(フランス)、ドイツ、イタリアなどがあります。
短い年数で収穫することができ、平地や緩やかな斜面で仕立てるので
機械の導入がしやすいというメリットがありますが、デメリットは収量は棚仕立てよりも少ない傾向にあります。

  • 棒仕立て

垣根を作ることができない急斜面で行われている仕立て。
樹の隣に棒を挿し、ハートの形のように長梢を縛り付けます。
主な産地はモーゼル(ドイツ)やローヌの北部(フランス)で、急斜面で作業する際に上下左右に行き来しやすいというメリットがあります。

  • 株仕立て

南フランスやスペイン、ポルトガルなどで行われている仕立て。
樹勢が強くない樹に適した仕立て方法で、地面から近い位置に実がなるため乾燥地で暖かい地域のブドウ品種に向いています。
機械の導入が難しく収量はあまり多くありませんが、近年では伝統的な栽培方法を復活させるため、株仕立てを採用する生産者もいます。

  • 棚仕立て

日本の生食用ブドウ栽培に多く採用されている仕立てで、代表的産地は日差しの強いイタリアやポルトガル、日本では降雨の多い山梨県や長野県です。

ブドウが棚の天面に広がるため、葉が地面に対し水平に広がります。果実が目の高さになることで、きめ細かい手入れが可能となります。
収量も垣根仕立てより多いですが、収穫は手作業で行う必要があります。

国によって?それとも土壌によって仕立ての方法は変わるのか

気候や土壌、手入れの大変な仕立てとは?
フランス国内でもボルドーとブルゴーニュでは垣根仕立てが主流ですがローヌでは棒仕立て、南フランスでは株仕立てと仕立て方法は様々です。

栽培地の気候(テロワール)と品種、ワイン醸造用か生食用か、植えられた土壌によって変化する樹勢など、ブドウ栽培を取り巻く様々な要素によって仕立ての方法は変わります。日本でも醸造用ブドウ栽培は垣根仕立てが主流ですが、山梨県では棚仕立てが多く採用されています。

剪定と新梢の管理はブドウ栽培の中でも特に作業時間が多く、これらの作業を省力化する為にはどのような樹形にするかが大きな影響を与えます。

日本では、農家の高齢化、後継者不足が深刻な問題となっており、高品質なブドウの安定供給を可能にするために「ハヤシ・スマート・システム」と呼ばれる棚仕立ての短梢剪定法が2000年代後半から長野県塩尻市を中心に普及しています。

従来の棚仕立てよりも省力で、通気性、日照性が良くなり、良質なブドウが栽培できるということでこの新しい栽培方法に期待が寄せられています。

「仕立て」は生育期に通気性や日光を樹に与えるための重要な作業

「仕立て」は生育期に通気性や日光を樹に与えるための重要な作業で、
それぞれの栽培地でそれぞれの気候に合った最適な栽培方法を見出していることがわかります。

写真は夏季の誘引作業をお手伝いさせてもらった時のソーヴィニヨンブランの様子です。
園芸用のテープナーで伸びて横に広がった枝をワイヤーに留めて誘引する作業をしながら重なった余分な葉を落とし、蛾の幼虫などの害虫を見つけたら駆除していくという作業です。

こちらのワイナリーは一般的な垣根仕立てで、緩やかな南向きの傾斜で日当たりが良く、1日を通して均等に日が当たるように畝が南北に伸びており、
時間によって垣根の西側と東側で体感温度が全く違ったのが印象的でした。

毎日飲んでいるワインに使われているブドウもこのような時間と手間をかけられて実ったのだと思うと、より一層美味しく感じられますね。

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