ソムリエ一次試験対策

先生、質問です! #04 ワインの色について

ソムリエ・ワインエキスパート試験対策の疑問にお答え!

この記事では、ヴィノテラスワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート一次試験対策講座の授業で受講生の皆さまから実際に出た質問に、アシスタント講師のマイ先生がお答えします!

  目次
  ◆ はじめに
  ◆ ブドウの色
  ◆ ブドウとワインの色の関係

  ◆ ロゼ・オレンジワイン 色のバリエーション
  ◆ まとめ

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はじめに

あなたは何色のワインが好きですか?

きりっと冷えた白ワイン。濃厚な赤ワイン。華やかなロゼワイン。はたまた独特の香りが楽しめるオレンジワイン・・・・・・。

ワインには様々な色があり、シチュエーションによって選ぶ楽しさがありますね。

ところでワインはどうして赤や白などの色がついているのでしょうか?

それは、原料であるブドウの色に関係しています。

今日はワインの色と、ブドウの色の関係について一緒に見ていきましょう!

・・・っか・・・

ブドウの色

◆ ブドウの色とは?

ブドウの色とは、ブドウの皮(果皮)の色のこと。

下記の画像のように薄い黄緑色の果皮のブドウを「白ブドウ」紫色の果皮のブドウを「黒ブドウ」と呼びます。

白ブドウ(左)、黒ブドウ(右)

白ブドウと黒ブドウの中間にあたる、すこしピンク・灰色がかった果皮のブドウもあり、「グリブドウ」(グリはフランス語で灰色)と呼ばれます。

グリブドウ(甲州)

ブドウは3月ごろに芽が出て5月には葉っぱやつぼみが生えてきます。
そしてそのつぼみから6月ごろには花が咲き、やがて実がなります

できたてのブドウの実は小さくて硬く、濃い黄緑色をしていて、上記の写真には似ても似つきません。どのように色づき成熟していくのでしょうか?

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◆ ブドウの実が色付くまで

3月      萌芽(発芽)  仏:Débourrement 英:Budburst

一日の平均気温が10℃を越えたころ、冬の間に剪定して整えておいた枝から芽が出て(萌芽)、そこから新しい枝が伸びていきます。

冬から春への変化と共に、ブドウの生育がスタートします。

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5月       展葉 仏:Feuillaison 英:Leaf growth

葉は光合成を行う重要な器官です。葉の細胞の中にある葉緑体で、太陽から放たれる光のエネルギーを利用して、水と二酸化炭素から植物の成長に必要な養分を作り出しています。養分は枝や葉の成長に利用されます。

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6月       開花  仏:Floraison 英:Flowering
6月  結実  仏:Nouaison 英:Fruit set

ブドウの花は、生花店で見かけるようないわゆる「花」とは少し異なり、花弁がありません
一見すると、どこに花があるの?と思ってしまうような見た目をしています。

1本のめしべと、5本のおしべむき出しの状態になっているのがブドウの花です。

なぜこのようなちょっと地味な見た目をしているのかというと、ブドウは風媒花なので、虫や鳥に見つけてもらうために花を目立たせる必要がないからです。

めしべが受粉すると、実ができます(結実)
結実したばかりのブドウの実は緑色で、小さく硬い状態です。

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7~8月 色付き  仏:Véraison 英:Veraison

実ができる前には葉っぱや枝の成長に使われていた養分ですが、結実後は糖分としてブドウの実の中にも蓄積されていきます。

ある程度実が大きくなると、今度はブドウの皮の色が変化してきます。
これが色付きです。

白ブドウの皮の色の変化は、実が軟化したり皮が成熟したりすることによって、元々の黄緑色が少し薄く黄色味を増していくような感じです。

黒ブドウの皮の色の変化は劇的で、黄緑色から徐々に変化して紫色になっていきます。
色付きの時期には、下記の画像のように、まだらになったブドウの実が多く見られます。

この紫色の元になるのは、アントシアニンという色素成分です。このアントシアニンも、光合成によって造られた糖分によって生成します。

9~10月の収穫に向けてブドウはさらに成熟していき、皮もしっかりと着色していきます。

このように、実が成熟していく最終段階で、ブドウの皮は色づいていきます

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 ◆ 色付きに関係する条件

【温度】 

色付きに必要な温度は20~25℃

くわえて日較差が大きい(=一日の中での温度差が大きい)方が、より濃い色に色付きます。

なぜ温度の差があるとより濃く着色するのでしょうか?

植物も生物なので、常に呼吸をしています。呼吸をするにも、養分が必要になります。

温度が高いと、植物の活動も旺盛になり、呼吸が活発になります。そのため、夜に気温が高いと呼吸のために養分が使われてしまいます

反対に夜が涼しければ、養分は呼吸に使われず、実の色付きや糖分の蓄積に回されることになります。

昼のうちに光合成をしてせっかく作った養分が使われてしまわないように、夜の気温は涼しいのが理想的なのです。

【標高】 

標高が高い産地では、ブドウはより太陽に近くなります

ブドウの果皮に含まれる紫色の色素成分であるアントシアニンは、紫外線などの有害な光から実を守る働きがあるため、標高の高い場所で育つ黒ブドウ品種はアントシアニンの量が多くなります

【ブドウ品種】

ブドウの品種によっても、果皮に含まれる色素成分の量や、果皮の厚さなどにより、ワインにした時の色付き方が異なります

色が濃くなる黒ブドウ品種で代表的なのは、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、シラー、マルベック、タナ、イタリアの地場品種であるサグランティーノなど。

淡い色になる黒ブドウで代表的な品種には、ピノ・ノワール、グルナッシュ、マスカット・ベーリーAなどがあります。

グリブドウと呼ばれる少し果皮のピンクがかった品種の果皮にも少量のアントシアニンが含まれていて、甲州、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールなどがあります。通常は白ブドウ品種に分類されています。

グリブドウ以外の白ブドウ品種には、基本的にアントシアニンが含まれていません

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ワインとブドウの色の関係

ここまで、ブドウの実が生り、色が付く流れや、色付きに関係する気候条件などをみてきました。

色付いて成熟したブドウをつぶして発酵させると、ワインができあがります

この時、皮の色が果汁へ移っていくことによって、できあがるワインに色が付きます

黒ブドウ、白ブドウ(およびグリブドウ)から、それぞれどんな色のワインが造られるのでしょうか?
一緒に見ていきましょう!

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 ◆ 用語の説明

説明の前に・・・出てくる用語の意味を確認しましょう!

破砕(はさい/Crush)

収穫したブドウの粒をつぶすこと。つぶすことによって果皮が破れて果汁が流れ出します。空気に触れて酸化が始まってしまうのを防ぐため、また発酵に不要な雑菌を殺菌するために、二酸化硫黄を加えるタイミングです。

醸し(かもし/Maceration)、発酵(はっこう/Fermentation)

※醸し中にピジャージュ(パンチング・ダウン)を行っているところ

醸しは、皮からの色や種子からのタンニンなどが果汁に移っていくこと発酵は、果汁に含まれる糖分がアルコール発酵を経てエチルアルコールに変換されていくこと。赤ワインでは、醸しと発酵が同時並行的におこります。

スキン・コンタクト(Skin contact)

白ワインに使われる醸造テクニックブドウを破砕後、圧搾する前の一定期間、果皮を果汁に漬けこむ工程のこと。
ブドウ品種ごとに特徴的な香りは果皮に含まれることが多い。スキン・コンタクトを用いて果皮から果汁に香り成分を移行させることで、出来上がるワインの香りを豊かに、複雑にする狙いがある。通常は2~24時間程度であることが多い。

圧搾(あっさく/Press)

果醪(かもろみ・・・発酵前、または発酵後の、果皮や種子と果汁が一緒になっているものを指す)や果実から果汁を抜き取り、果皮や種子、梗と分離させること。赤ワインでは醸し、発酵後の果醪を圧搾してワインを取り出す白ワインではブドウをそのまま圧搾して、果汁のみを発酵させる

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 ◆ 黒ブドウからできるワイン

まずは黒ブドウについてみていきましょう。
黒ブドウからは下記の3種類のワインを造ることができます。

黒ブドウからできるワイン
● 赤ワイン
● ロゼワイン
● 白ワイン

それぞれの造り方をみていきます。

【赤ワイン】

黒ブドウを破砕し、そのまま発酵させる。
発酵と同時に醸しが行われ、皮の紫色が果汁に移っていく
発酵後に圧搾すると、紫色のワインが得られる。

【ロゼワイン】

代表的な製法 その1:セニエ法

黒ブドウを破砕後の醸し期間の初期または発酵の開始前に、して、皮の紫色がほどよく移ったところで果汁を抜き取る
完全に紫になっていないロゼ色の果汁を発酵させる。
途中でロゼ色の液体を抜き取るのが瀉血(血抜き・・・昔行われていた、悪い血を抜くことによる健康法)に似ているため、フランス語で瀉血を意味するセニエ法とよばれる製法。
果皮が果汁と接している時間が長いので、色は濃い目
より赤ワインに近いキャラクターをもつロゼワイン

代表的な製法 その2:直接圧搾法

黒ブドウを破砕して、圧搾
圧搾の際、少しだけ皮の紫色が果汁に移るため、ロゼ色の果汁となる。
その後ロゼ色の果汁を発酵
ブドウを直接(Direct)圧搾する(Press)ので、直接圧搾法や、ダイレクトプレスとよばれる製法。
より白ワインに近いキャラクターをもつロゼワイン。

【白ワイン】

黒ブドウを破砕、圧搾
非常に弱い力で圧搾すると、皮の色の付かない液体が得られる。
これを発酵させれば白ワインになる。

ちなみに黒いブドウから造った白ワインは、「ブラン・ド・ノワール」と呼ばれます。
ブラン=白、ノワール=黒で、直訳すると黒の白・・・つまり黒ブドウから造った白ワインという意味です。
ブラン・ド・ノワールが用いられるワインでもっとも有名なのは、高級スパークリングワインとして知られるシャンパーニュ
シャンパーニュといえば、いわゆる白ワインの見た目をしていることが多いですよね。
しかし、原料として使われる主要ブドウ品種3種のうち、2つは黒ブドウです。白ブドウだけを使って造る場合もありますが、多くは黒ブドウがブレンドされています。
なぜ白い見た目のシャンパーニュができるのかというと、特別な圧搾機優しくプレスしているからです。これによって、アントシアニン色素が流れ出すのを防いでいます

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 ◆ 白ブドウ・グリブドウからできるワイン

つづいて白ブドウと、グリブドウについて。
これらのブドウからは、下記2種類のワインが造られます。

白ブドウ・グリブドウからできるワイン
● 白ワイン
● オレンジワイン

それぞれの造り方をみてみましょう!

【白ワイン】

白ブドウ、もしくはグリブドウを破砕、圧搾
果汁を発酵させれば白ワインになります。

オレンジワイン

白・グリブドウを破砕した後、圧搾せず、通常よりも長くスキン・コンタクトを行います。
この期間に果皮の色が果汁に移り、オレンジ色~琥珀色になります。
少しピンクがかった果皮のグリブドウは、果皮の色が抽出されやすいためオレンジワインに向いています。白ブドウであれば黄色味の強い果皮の品種が使われます。

黒ブドウ、白ブドウ(およびグリブドウ)から造られるワインの種類がわかりましたね!

以上をまとめると……

赤ワイン:黒ブドウを破砕→醸し・発酵→圧搾
白ワイン:白ブドウ(黒ブドウ)を破砕→圧搾→発酵

となります。
赤ワインと白ワインでは、圧搾と発酵の順番が逆ですね。

そして赤・白ワインの製法をふまえると、ロゼ・オレンジワインは次のように説明することができます。

ロゼワイン:黒ブドウを白ワインのように造る
オレンジワイン:白ブドウを赤ワインのように造る

実際のワイン造りにはさらに細かい工程があり、様々なテクニックが使われていますが、まずは4つのワインの製法を簡単な言葉で言えるようにしておきましょう!

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ロゼ・オレンジワイン 色のバリエーション

前の項目では、ロゼワインとオレンジワインについて下記のように説明しました。

ロゼワイン:黒ブドウを白ワインのように造る
オレンジワイン:白ブドウを赤ワインのように造る

一言でいえばその通りなのですが、ロゼワインには少し異なる製法もあります。またオレンジワインも、色の濃さにバリエーションがあります。

それぞれのワインのもう少し細かい分類を、色合いに着目して簡単にご紹介します。

 ◆ ロゼワインの製法

セニエ法(前章参照)

直接圧搾法(前章参照)

ブレンド法

白ワインと赤ワインを混ぜてロゼワインを造る方法です。
一般的には禁止している国も多いですが、例外として有名なのはシャンパーニュ
シャンパーニュには白とロゼがあります。
ロゼシャンパーニュを造るには、①セニエ法②直接圧搾法、そして③ブレンド法のいずれかを使うことが決められています。
そして多くのロゼシャンパーニュがブレンド法を採用しています。
その理由は、美しいロゼ色に調整しやすいためです。
程よく色づくタイミングを計るよりも、できあがった白ワインと赤ワインを混ぜて色を調整する方がやりやすそうなのは、なんとなくイメージできると思います。
シャンパーニュは祝祭のお酒。ロゼのシャンパーニュはその中でも特別な存在です。
淡いピンクの美しい色合いと、きらきらと輝く繊細な泡立ちは、飲む人の気持ちを高揚させてくれますね。
そのような美しい色に調整するには、ブレンド法が一番適しているというわけです。

混醸法

黒ブドウと白ブドウを混ぜた状態で醸造することで、ロゼワインを造る方法です。
ドイツ各地で作られる「ロートリング」が有名です。
淡い赤色か、明るい赤色に造られます。

 ◆ オレンジワインの細かい分類

ヴァン・グリ

ドメーヌ・アラン・ヴィニョ / ブルゴーニュ・コート・サンジャック・ピノ・グリ [2021]
https://vnts.shop/SHOP/105182.html

グリブドウ(ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネール、甲州など)から造られ、ややくすんだピンク色をしたワインはヴァン・グリ灰色のワイン)と呼ばれます。

ヴィーノ・ラマート

ピノ グリージョ ラマート 2021 アテムス 750ml  [白]Pinot Grigio Ramato Attems【6本〜送料無料】
https://www.tuscany.co.jp/products/detail149430.html

イタリア北部のフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州では、グリブドウであるピノ・グリージョ(ピノ・グリ)から伝統的にオレンジワインが造られています。
その色合いから、ヴィーノ・ラマート(銅色のワイン)と呼ばれています。

アンバー・ワイン

ワイン造り8000年の歴史を持つジョージアでは、クヴェヴリという素焼きの壺でオレンジワインを造る伝統があります。
クヴェヴリで発酵・貯蔵したオレンジワインはより色合いの濃いものが多く、アンバー・ワイン(琥珀色のワイン)と呼ばれます。
なぜこのように色が濃くなるのでしょうか?
ジョージアでは、クヴェヴリの中で果皮や種子と果汁を漬け込んだまま5~6カ月ほど醸し期間をとることもあります。
その間に、果皮からワインに色が移って濃くなっていくのです。
同時に渋味(タンニン)様々なアロマ味わいが抽出され、ワインに複雑さを与えます。

ロゼワイン、オレンジワインともに、色合いに様々なバリエーションがあることがわかりました。
色合いが変われば香りや味わいも異なります。
ぜひ飲み比べて確認してみてくださいね!

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まとめ

今日はブドウの色と、ワインの色の関係について解説しました。
ここで生徒さんからの質問をもう一度おさらいしてみましょう!

これからも様々な角度からワインの疑問にお答えしていくので、どうぞお楽しみに!

VINOTERASのYouTubeチャンネルでは、この記事をより詳しく解説した動画を投稿しています。是非チェックしてみてください!

▼先生、質問です!の動画はこちらから▼

参考文献

(一社)日本ソムリエ協会 教本2023

ヴィノテラス ワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 2023 Vol.1

『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』デイヴィット・バード著、佐藤圭史/村松静枝/伊藤伸子訳、株式会社エクスナレッジ、2022年

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