ソムリエ・ワインエキスパート試験対策の疑問にお答え!
この記事では、ヴィノテラスワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート一次試験対策講座の授業で受講生の皆さまから実際に出た質問に、アシスタント講師のマイ先生がお答えします!
目次
◆ はじめに~世界のスパークリングワイン
◆ フランス
◆ イタリア
◆ スペイン
◆ ドイツ
◆ ポルトガル
◆ 英国
◆ 南アフリカ
◆ まとめ
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世界のスパークリングワイン
EU主要4か国での発泡性ワイン・弱発泡性ワインの総称と、
それぞれの国を代表するスパークリングワインの製法をみていきましょう!
また4か国以外にも特筆すべきスパークリングワインを簡単にご紹介します。
◆ フランス
発泡性ワインの総称 ヴァン・ムスー(Vin Mousseux ムスー=発泡性の)
弱発泡性ワインの総称 ペティヤン(Pétillant ペティヤン=泡立つ)
シャンパーニュ(瓶内二次発酵方式)
スパークリングワインのことを「シャンパン」と言ってしまう人が続出するほどの代名詞的存在。フランスの北東部、パリから東へ140kmほどの距離にあるシャンパーニュ地方の決められた地域で、瓶内二次発酵方式で造られたワインしかシャンパーニュを名乗れません。その他、ブドウの圧搾の方法や瓶詰めの時期、瓶内での熟成期間などにも細かい規定があります。滓の上での熟成によって生まれる複雑な味わいが身上です。
クレマン(瓶内二次発酵方式)
クレマンはシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式で造られるスパークリングワインの総称で、ボルドーやブルゴーニュなど、フランス国内の8カ所の地域で造られています。
瓶内での熟成期間規定はシャンパーニュに比べて短く(シャンパーニュが最低15カ月に対して、クレマンはほとんどが最低9カ月)、よりカジュアルに楽しめるワインです。
フランス国内で最も多く消費されているのが、アルザス地方で造られる「クレマン・ダルザス」。ロゼはピノ・ノワールのみ、白はシャルドネやリースリングなどの品種から造られます。
◆ イタリア
発泡性ワイン スプマンテ(Spumante)
弱発泡性ワイン フリッツァンテ(Frizzante)
フランチャコルタ(瓶内二次発酵方式)
北部イタリアのロンバルディア州で造られる、瓶内二次発酵のスパークリングワイン。※イタリア語で瓶内二次発酵は「メトド・クラッシコ(Methodo Classico)」といいます。
フランチャコルタの最低瓶内熟成期間はシャンパーニュの最低15カ月よりも長い18カ月。生産量は年間2000万本程度で、3億本以上といわれるシャンパーニュの10%にも届きません。
シャンパーニュに比べると果実感があり飲みやすい味わいが特徴です。
プロセッコ(シャルマ方式)
北部イタリアのヴェネト州で造られる、シャルマ方式のスパークリングワイン。白とロゼがあります。
全世界で破竹の勢いで売れているスパークリングワインで、人気の理由はそのフレッシュでフルーティな味わい。そうしたアロマや味わいを実現するためにシャルマ方式が用いられています。プロセッコの主要品種であるグレーラは、イタリアの白ブドウ品種の中で栽培面積が最大の品種ですが、それはプロセッコに使われているためです。
アスティ・スプマンテ(アスティ・メソッド)
北部イタリアのピエモンテ州で造られるアスティ・スプマンテは、モスカート・ビアンコという白ブドウ品種を使った甘口のスパークリングワインとして知られています。その製法は「アスティ・メソッド」と呼ばれるほど独特なのでご紹介します。
除梗・破砕して圧搾したモスカート・ビアンコの果汁は、発酵を始めるまで冷やして保存しておきます。フレッシュなアロマや味わいを保持するためです。
発酵は加圧タンクで行いますが、最初は二酸化炭素を逃がします。
発酵の途中でタンクを密閉して二酸化炭素を閉じ込め、ワインに溶け込ませていきます。
アルコール度数約7%、圧力が4~5気圧になったら、ワインを冷やすことで酵母の活動を止め、発酵を中断します。
その後、酵母を除去するために加圧された環境で濾過して、すぐに販売できるよう瓶詰めされます。
◆ スペイン
発泡性ワイン エスプモーソ(Espumoso)
※スペイン語では特に弱発泡性ワインを指す一般的な総称はないようです。
地域ごとに見ると、地中海沿岸で造られる弱発泡性ワイン「ビノ・デ・アグハ(Vino de Aguja)」があります。またバスク地方で造られる「チャコリ(Chacolí)」は微発泡に感じられるものがありますが、これはできたてをすぐに飲むことから発酵の際の二酸化炭素が残っているためで、チャコリ自体はスティルワインに認められている呼称です。チャコリ・デ・ゲタリア、チャコリ・デ・ビスカイヤ、チャコリ・デ・アラバの3つの呼称があります。
カバ(瓶内二次発酵方式)
スペインを代表する瓶内二次発酵のスパークリングワイン。
他の瓶内二次発酵のスパークリングワインに比べて安価に手に入るため、カジュアルなビストロやバルなどでグラスのスパークリングワインとして採用されていることも多いワインです。
カバは、伝統的にスパークリングワインを貯蔵していた「洞窟」を意味する言葉が語源とされています。
シャンパーニュと違って、産地の名前を表すものではありません。
◆ ドイツ
発泡性ワイン シャウムヴァイン(Schaumwein シャウム=泡、発泡)
弱発泡性ワイン パールヴァイン(Perlwein)
ゼクト(製法は定められていない)
「シャウムヴァイン」はドイツのスパークリングワインの総称ですが、品質によって4つに区分されています。その区分の中の一つが「ゼクト」です。
単に「ゼクト」といった場合、ベースとなるワインは白・赤・生産国などいろいろなワインを混ぜ合わせてよいことになっています。また炭酸ガスを得る方法も規定されていません。
「ドイッチャー・ゼクト」という区分になると、ドイツ国内産のワインを使うことが定められています。
さらに「ゼクトb.A.」という区分になると、ドイツ国内のより細かい生産地域から造られたワインを使い、瓶内二次発酵方式を用いる必要があります。
◆ ポルトガル
ヴィーニョ・ヴェルデ(スティルワイン、微発泡のスタイルが多く見られる)
ポルトガル北西部、スペインとの国境沿いに広がるミーニョ地方で造られている白ワイン、ヴィーニョ・ヴェルデ。
ヴィーニョはワイン、ヴェルデは緑。つまり「緑のワイン」という名前ですが、ワインが緑色なわけではありません。味わいの特徴であるフレッシュさをイメージさせる言葉として“緑”という名前がついています。
そのフレッシュさを際立たせるため微発泡のスタイルになっていることが多く、瓶詰めの際に炭酸ガスを少量加えるなどの手法があります。
アルコール度数が低く爽やかなタイプで知られていましたが、近年は技術の向上などによって、発泡しておらずアルコール度数も高いしっかりとしたタイプも多く生産されています。
また白ワインが有名ですが、赤ワイン、ロゼワインも造られています。
◆ 英国
シャンパーニュの輸入量はアメリカに次いで世界2位の英国。(ちなみに3位は日本です。)
自国で生産しているワインの約7割をスパークリングワインが占めています。
英国のスパークリングワインは品質向上・生産量の増加が著しく、特にイングランド南部のスパークリングワインはシャンパーニュに近いスタイルで世界的な評価を得ているものも多数存在しています。
イングランドとシャンパーニュには、実は共通点があります。
シャンパーニュ地方に特徴的な白亜質土壌が、イングランド南部にもみられるのです。イングランド南部のハンプシャー、サセックスでは、白亜質土壌が地表に露出した丘陵地帯「South Downs サウス・ダウンズ」が見られます。これらの地域で栽培されるブドウはスパークリングワインの原料として特に注目されています。
◆ 南アフリカ
キャップ・クラシック、メトード・キャップ・クラシック(MCC)
南アフリカで1971年から造られている、瓶内二次発酵方式のスパークリングワイン。1992年にはキャップ・クラシック生産者協会が設立され、国内外でのキャップ・クラシックの認知拡大に力を注いでいます。その甲斐あって、2009年からの10年間で輸出量が16.7倍と急激な成長を遂げています。
使用するブドウ品種は特に定められていませんが、シャンパーニュの主要品種と同じシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエを使うことが推奨されています。瓶内熟成期間は最低12カ月で、多くの生産者はさらに長い熟成期間を設けています。
日本の輸入量は世界第10位ですが、今後さらに目にする機会が増えるかもしれません。
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まとめ
今日は世界のスパークリングワインについて解説しました。
ここで生徒さんの質問をもう一度おさらいしてみましょう!
これからも様々な角度からワインの疑問にお答えしていくので、どうぞお楽しみに!
参考文献
(一社)日本ソムリエ協会 教本2023
ヴィノテラス ワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 2023 Vol.1,2
『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』デイヴィット・バード著、佐藤圭史/村松静枝/伊藤伸子訳、株式会社エクスナレッジ、2022年
『土とワイン』アリス・ファイアリング/パスカリーヌ・ルペルティエ著、村松静枝訳、株式会社エクスナレッジ、2020年
『Understanding wines: Explaining style and quality』Wine & Spirit Education Trust
シャンパーニュ委員会
シャンパーニュ ポメリー