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ワイン愛好家を悩ませる コルク臭「ブショネ」

ワインに触れていると一定の確率で遭遇する「ブショネ」。天然素材であるコルクを加工する際に使用される塩素が、製品となったコルク栓に微量に残ってしまい、付着した微生物と反応し、TCA(トリクロロアニゾール)という物質が発生することから起こります。

ワイン愛好家を悩ませている「ブショネ」は不快な臭いを感じさせ、できれば避けたいブショネですが、クロージャーとして特に天然コルクを使用する限り、ブショネをゼロにすることは難しいと言われています。
近年、技術の進歩によりブショネの発生は減少傾向にあるようですが、ワインボトルから見ただけでは判別ができず、そのワインがブショネであるかどうかは開けてみないとわかりません。そして、ブショネ特有の香りは何度か経験をしないと判別するのは難しく、強くブショネの臭いがするものもあればわずかにしか感じられないものもあり、その程度は様々です。
飲む人によって香りの感じ方には差があり、人によってはブショネとわからず飲んでしまい、本来は素晴らしい味わいのワインもあまり美味しくないワインという印象になり、次に飲まれる機会を失ってしまうことになりかねません。

今回は、消費者にとっても生産者にとってもこのような悲しい結末に繫がり兼ねない、とても厄介な「ブショネ」について掘り下げていきます。


   目次
  ・コルク栓のメリット・デメリット 他の栓で「臭」は発生する?
  ・ブショネの見分け方
  ・ブショネだったら?返品・交換について
  ・コルク栓の新たな発見

コルク栓のメリット・デメリット 他の栓で「臭」は発生する?

ワインに用いられる様々な栓を総称して、クロージャーと呼びます。現在では、ブショネのリスクを回避するためや、良質なコルク樫の減少などの理由からコルク以外の素材から作られるクロージャーも多くあり、
生産者は目指すワインのスタイルによってその素材を選定しています。


クロージャーの種類

  • 天然コルク
  • 圧搾コルク(テクニカルコルク)
  • 合成コルク
  • スクリューキャップ
  • ガラスキャップ
  • プラスチックキャップ

コルク栓を使用する際の最大のデメリットはコルク臭がついてしまう可能性が高くなることですが、天然コルクを使用しなかったとしても、ブショネのリスクが無くなる訳ではありません。

コルクが原因の場合は、天然素材であるコルクを加工する際に使用される塩素が、製品となったコルク栓に微量に残ってしまい、付着した微生物と反応し、TCA(トリクロロアニゾール)という物質が発生。これがブショネの原因となるという経路ですが、その他にもワイナリーで使用される木樽などの木製品にもフェノール化合物は含まれているため、これらの木製品に塩素系の洗浄剤を使用することでTCAが発生し、結果としてワインが汚染されてしまうという経路もあります。

TCA由来の臭いの被害はワインだけではなく飲料水や他の食品でも発生しており、わずかな量でもカビ臭を発生させることから、食品製造過程では細心の注意が払われていますが、発生をゼロにすることは極めて難しいと言われています。

ブショネの見分け方

ブショネってどんな香り?その臭い、特徴、見分け方について。TCA(トリクロロアニゾール)が風味を損ねる?

近年、技術の進歩によりブショネの発生は減少傾向にあるようですが、ボトルの見た目だけでは判別ができず、そのワインがブショネであるかは開けてみないとわかりません。
ブショネ特有の香りは何度か経験をすると、明らかに他の劣化とは違う香りだとわかるようになりますが、感じ方には個人差があり、最初は判別するのがとても難しいです。

強く不快な臭いがするものもあれば、わずかにしか感じられないワインもあり、その程度は様々ですがブショネの場合
濡れた段ボールのような臭い、カビのような臭い と表現されることが多いです。
口に入れるのをためらうような臭いであれば、そのワインはブショネかもしれません。

美味しさを感じ取るために香りはとても重要な要素ですので、
TCAはわずかな量でもカビ臭を発生させるため、味わいにも大きな影響を与えます。
近年の研究で、TCAにはマスキング作用と呼ばれる臭いの元があっても臭いを感じさせない働きがあることがわかっています。また、TCAがあると味覚が麻痺するため、ワインの果実味を感じなくなる事があります。

ブショネだったら?返品・交換について

ブショネワインに出会わないために注意する事。

レストランであれば、注文したワインは提供する前にソムリエがテイスティングをします。ブショネだった場合、ほとんどの店では新しいワインを用意してくれるでしょう。お店によっては、ソムリエの解説付きでブショネしたワインの味見をさせてくれるかもしれません。

レストランであれば安心ですが、自宅で飲む際はその判断が難しいところです。

ブショネはボトルの見た目ではまず判断ができないので、ご自分でワインを選ぶ時には天然コルクではないクロージャーを使用しているワインを選ぶようにすると、ブショネのワインと出会う確率を下げることができるかもしれませんし、もし出会ってしまっても、返品や交換に応じてくれるワインショップで購入するようにしておくと安心です。
ワインショップによって、ブショネによる返品・交換に応じてくれるお店と、そうではないお店があるので事前に確認・相談しておくのも良いと思います。
もし「あれ?」と思った時には、楽しいひと時を台無しにしないよう、購入先のソムリエに相談してみてください。

コルク栓の新たな発見

天然コルクを使用しないワインを選ぶことは、ブショネしたワインに当たらないようにするための回避方法ではあります。

瓶詰されたワインはその後も息をしており、熟成を楽しむ事が最大のメリットですが、その際に出てしまうコルク臭(ブショネ)のリスクはワインにはつきものです。

天然コルクの酸素透過率は、瓶詰後に密閉状態になると発生してしまう還元臭を抑えるのに理想的という側面や、コルクは樹皮を使用するため、樹を伐採することなく繰り返し収穫することができるエコな素材として、近年見直しがされています。

コルクの最大生産国であるポルトガルの大手メーカーからは、汚染が無いことを保証する「TCA保証付き天然コルク」が販売され、業界全体が抱える大きな問題の解決に取り組んでおり、ブショネの発生は昔に比べ減ってきていると言われています。

できれば出会いたくないブショネですが、コルク臭(ブショネ)を見分ける事は、毎日ワインに携わるソムリエやワインのインポーターにとっては必須です。
もし出会ってしまった時は、自身の知見を深めるための良い機会と捉えるとそれも一つの出会いとして楽しむことができるのではないでしょうか。

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