ソムリエ一次試験対策

先生、質問です! #08 剪定と仕立て方

ソムリエ・ワインエキスパート試験対策の疑問にお答え!

この記事では、ヴィノテラスワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート一次試験対策講座の授業で受講生の皆さまから実際に出た質問に、アシスタント講師のマイ先生がお答えします!

  目次
  
◆ はじめに
  ◆ ブドウの生育サイクル~新梢について
  ◆ 剪定
  ◆ ブドウ樹の仕立て方
  ◆ まとめ

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はじめに

ブドウの休眠期に行われる「剪定」という作業があります。
春に始まるブドウの生育期に向けて行う大事な作業ですが、いったいどのような意味があるのでしょうか?

また、樹をどのような形にして育てていくのかもブドウにとって重要です。
気候やブドウ品種によって、適した樹の形があり、そのような形に整えていく方法を「仕立て方」といいます。

今回は「剪定」と「仕立て方」について解説します!

ブドウの生育サイクル~新梢について

ブドウは、春になるとがでます。

芽が伸びたものは、「新梢」と呼ばれます。新しい枝、という意味です。この新梢から、ゆくゆく、葉っぱや花、ブドウの実、つるが出てきます。

ちなみに新梢の「梢」という漢字は「こずえ」とも読みます。「木の末」が語源の言葉で、木の幹や枝の先、という意味です。

夏が過ぎて秋になってブドウの収穫が終わり、葉っぱやつるの部分が枯れてしまうと、ブドウの樹は幹と枝だけの寂しい姿になりますが、この枝——つまり今年の春に芽吹いた新梢には、次の年の新梢になる芽ができています。ちょうど葉っぱの付け根だった部分です。

このは、翌年の春になると新梢として伸びていき、やがて葉っぱや花やブドウの実、そしてつるが出てきます。

ブドウは毎年これを繰り返しています。

剪定

もし、何もせずにブドウを伸び放題にしていると、実を生らせることより枝を伸ばすことばかりにエネルギーが使われてしまうそうです。
つまり、ブドウに養分を集中させるには、枝の生育をある程度抑制する必要があるといえます。

また、ブドウはたくさんなればいいというわけではありません
例えば同じブドウの樹に、5房のブドウがなった場合と、10房のブドウが生った場合。5房の場合の方が、1房にいきわたる養分の量が多くなります。糖度やフレーバーが凝縮したいいブドウができるのです。
養分の集中したブドウを造るには、ブドウの数を制限する必要がある、ということです。

このような理由から、冬の間にブドウの枝を適切な長さに剪定して、今年はいくつ新梢を伸ばすのか、つまりどのくらいブドウの実をならせるのかを決める必要があります。

剪定は、次のシーズンの収穫量を決める重要な作業なのです。

ブドウ樹の仕立て方

ブドウの樹をどのような形にして育てるか、その方法を「仕立て方」といいます。

ブドウはつる性の植物なので、他の植物や、人間が立てた支柱などにつるを絡みつかせることによって自身を支えて成長していく性質があります。

つるを絡みつかせるものの種類によって仕立て方が分類されているので、いくつかご紹介します。

垣根仕立て

去年の新梢(2年目の枝)から、今年の新梢が地面と垂直に伸びていきます

地面と平行に張り巡らせたワイヤーでできた垣根につるが巻き付くので、垣根仕立てといいます。
垣根仕立ては世界中でもっとも多く採用されている仕立て方で、太陽の光を効率よく浴びることができ、風通しがよいことや、機械収穫ができることなど、様々なメリットがあります。

垣根仕立ては、長梢剪定短梢剪定に分けられます。

長梢剪定

去年の新梢を長く残しておく剪定方法を「長梢剪定」といいます。長梢からは5~15の芽が出るように剪定します。

長梢剪定として広く用いられるギヨ式剪定法は、19世紀フランスの植物学者であるジュール・ギヨ博士が広めました。以下の2つがあります。
※イラストの細い枝2年目の枝(去年の新梢)で、そこから出ているものが芽(今年の新梢が出てくる)です。太いものは幹や、2年目よりも前の枝です。

・ギヨ・サンプル

サンプルはフランス語で「単一の」という意味で、イラストのように長梢を1本伸ばします。イラストで左に伸びているのは短梢で、この短梢から伸びた新梢を長く残して剪定して、翌年の長梢とします。

・ギヨ・ドゥブル

ドゥブルはフランス語で「2倍の」という意味で、長梢2本を左右に水平に伸ばします。長梢は自然と水平に伸びていくわけではなく、人間の手でワイヤーにくくりつける必要があります。この作業を誘引といいます。

【短梢剪定】

去年の新梢を短く残す方法を「短梢剪定」といいます。短梢からは2つか3つの芽が出るようにします。

・コルドン・ロワイヤ

これは、ギヨ式剪定法で長梢(例えば、20XX年の新梢)から伸びた新梢(20XX+1年の新梢)を、翌年に剪定して2芽の短梢として残す方法です。その短梢から、新梢(20XX+2年の新梢)が伸びてきます。その新梢をまた短梢に剪定して、そこから新梢(20XX+3年の新梢)を伸ばします。
長梢剪定に比べて、枝を伸ばしてワイヤーにくくりつける誘因という作業がないぶん手間がかからず、短梢からは充実した枝が伸びる傾向にあるため、比較的簡便な選定方法といえます。しかし、短梢の根元の部分がだんだんと膨らんできてしまうので、何年かに一度は横に伸びる枝を幹の近くで切り、長梢剪定を行って樹の形を整える必要があります。

棚仕立て

人の頭の上の位置に水平にブドウを生らせていく仕立て方です。

イラストのように、枝が棚に沿って伸びていくので、葉が地面に対して水平に広がります。
果実が目の高さに生ることでブドウの状態をよく見ることができるため、きめ細すかい手入れをすることが可能になります。
生食用ブドウに適用されることが多い仕立て方で、ブドウ狩りにいったことがある方にとっておなじみの仕立て方ではないでしょうか。

雨が多い日本で有効な仕立て方です。
ブドウの上にひろがる葉っぱが雨除けになり、またブドウと地面が離れているため風通しがよくなり、カビなどの病害の原因を減らすことができます。

イタリアやポルトガル日差しが強い地域でも採用されていて、この場合は葉っぱが日よけになってくれます。
果実にとってほどよく日光を浴びることは、皮の色付きや諸成分の成熟にとって必要ですが、あまりに強い光でブドウの温度が上がりすぎると「日焼け」を起こし、焦げたような香り・味わいがワインに出てしまいます。
過度な日光を避けるために、棚仕立てで葉っぱを日よけにすることが有効な場合があるのです。

株仕立て

株仕立ては南フランスやスペイン、ポルトガルなど温暖で乾燥した気候で用いられることが多く、フランス語ではGobelet(ゴブレ)と呼ばれます。
他の仕立て方と違って、ワイヤーや支柱を使わない原始的な方法で、最も古くから行われる仕立て方といわれています。

図のように、幹の上部に短梢を数本残します。長梢剪定をする場合もあります。

フランス、ローヌ渓谷地方の南部では、ミストラルという風速30m/秒を超えるような強い北風が一年のうち120~160日間も吹き続けます。
垣根仕立てだとまともに風を受けて樹が折れてしまうので、背の低い株仕立てを採用することで風からブドウを守っています

またローヌ渓谷地方の南部では、写真のような丸い石がよく見られます。この石が昼の間に太陽の熱を吸収し、夜に放出してくれるおかげで、ブドウは常に暖かい状態に置かれ、十分に熟すことができます。

棒仕立て

ドイツのモーゼルや、フランスのローヌ渓谷地方北部など、急斜面に畑がある産地に見られる仕立て方です。

地面に垂直に立てられたに沿って、新梢を長く残した「長梢」をハート状に折り曲げて縛り付けます。

急斜面の畑ではワイヤーを使って垣根を張ることが難しいため、この棒仕立てが採用されます。また畑作業をする際に上下左右に動きやすいこともこの仕立て方のメリットです。

まとめ

今日は剪定と仕立て方について解説しました。

ここで生徒さんの質問をもう一度おさらいしてみましょう!

これからも様々な角度からワインの疑問にお答えしていくので、どうぞお楽しみに!

VINOTERASのYouTubeチャンネルでは、この記事をより詳しく解説した動画を投稿しています。是非チェックしてみてください!

▼先生、質問です!の動画はこちらから▼

参考文献

(一社)日本ソムリエ協会 教本2023

ヴィノテラス ワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 2023 Vol.1,2

『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』デイヴィット・バード著、佐藤圭史/村松静枝/伊藤伸子訳、株式会社エクスナレッジ、2022年

『Understanding wines: Explaining style and quality』Wine & Spirit Education Trust

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