ソムリエ一次試験対策

先生、質問です! #05 スパークリングワインのあれこれ

ソムリエ・ワインエキスパート試験対策の疑問にお答え!

この記事では、ヴィノテラスワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート一次試験対策講座の授業で受講生の皆さまから実際に出た質問に、アシスタント講師のマイ先生がお答えします!

  目次
  ◆ 泡はどこからやってくるの?
  ◆ スパークリングワイン 5つの製法
  ◆ 「Brut(ブリュット)」って何?
  ◆ まとめ

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泡はどこからやってくるの?

◆ スパークリングワインとは

単にスパークリングワインと言った場合、EUの規定では3気圧以上のガス圧をもったワインとされています。

3気圧未満、1気圧以上のガス圧をもつワインを弱発泡性ワイン

それ以外のものがスティルワインと呼ばれます。

ちなみに日本の酒税法では、発泡性を有するものを「20℃におけるガス圧が49キロパスカル以上の炭酸ガスを含有する酒類」としています(49キロパスカルは大体0.5気圧のこと)。

◆ 泡の正体?

ワインは、ブドウ果汁に含まれる糖分酵母アルコール発酵してエチルアルコールに変えることでできあがります。

アルコール発酵の過程では、エチルアルコールとともに二酸化炭素が発生しますが、この二酸化炭素がスパークリングワインの泡の正体です。

安価なスパークリングワインの製法では、スティルワインに炭酸ガスを吹き込む方式も採用されることがありますが、それ以外のスパークリングワインの泡の正体は、アルコール発酵によって発生した二酸化炭素です。

◆ スティルワインの泡立ち?

スティルワインを造るときにも二酸化炭素が発生しているはずですが、通常は発酵の際に発生した二酸化炭素空気中に逃げていってしまいます

しかし、グラスに注いだ時わずかに気泡が見えたり、口に含んだ時少しプチプチ発泡していたりするスティルワインに皆さんも遭遇したことがあるかもしれません。

この気泡わずかな泡立ちは、発酵した後にステンレスタンク密閉状態で保管されたワインや、発酵の際に発生した二酸化炭素が抜けきらないうちに瓶詰めした場合、瓶詰めの際に酸化を防ぐためにガスを充てんしたワインに見られます。

つまり、保管状態から解放されたばかり瓶詰めされたばかりのフレッシュな状態にあることを示しています。

また亜硫酸の添加量が少ない無添加であるワインが再発酵してしまった場合もありえます。

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スパークリングワイン 5つの製法

ソムリエ協会の教本で紹介されているスパークリングワインの製法は5つありますが、それぞれの製法によって品質や価格は大きく異なります

例えば高級スパークリングワインの代名詞であるシャンパーニュは、最も時間と手間のかかる「トラディショナル方式」で造られています。また、大量消費用の廉価なスパークリングワインは、スティルワインに炭酸ガスを後から吹き込むだけの「炭酸ガス注入方式」で造られる、といった具合です。

◆ トラディショナル方式・瓶内二次発酵方式

この方法で造られる名高いワインの名を取って「シャンパーニュ方式」とも呼ばれ、スパークリングワインの製法の中で最も手間と時間がかかる方法です。

まずスティルワインを造って瓶に詰め、そこに糖分と酵母を加えて密閉します。すると追加した糖分と酵母がアルコール発酵(二次発酵)をはじめ、エチルアルコールとともに二酸化炭素が発生します。瓶は密閉されていて逃げ場がないので、発生した二酸化炭素はワインに溶け込んでいきます。

役目を終えた酵母となって瓶の底にたまっていき、自己消化を起こしてワインの中に溶け込んでいきます。

自己消化(英:autolysis)とは、自らの保有する酵素により、自己の組織が分解していくこと。肉をしばらく置いておいて、柔らかさやうま味を増す「熟成肉」という手法を聞いたことがあると思いますが、それと同様のことが酵母に起こり、ワインにも旨味を与えます。

滓の上での熟成期間が、瓶内二次発酵方式で造るスパークリングワインの味わいの決め手といえます。

滓は出荷前には取り除かれます。水平に寝かせていた瓶を、徐々に傾きをつけながら回転させて垂直に近い状態にしていくと、滓を瓶口にためることができます。滓の部分だけを凍らせ、瓶の栓を開けると、中のスパークリングワインのガス圧で凍った滓が飛び出します

その直後に、甘味の調整のためにリキュールを添加して、打栓(瓶口にコルクを打ち込み、ミュズレという金具で留める)。リキュールがワインとなじむように寝かせてから、出荷します。

瓶を回転させながら瓶口に滓を集めていくことを「動瓶(ルミュアージュ)」、滓を凍らせて瓶から飛び出させることを「滓抜き(デゴルジュマン)」、甘味調節のためのリキュール添加を「糖分調整(ドザージュ)」と呼びます。

◆ シャルマ方式

先ほどの瓶内二次発酵方式では、スティルワインに糖分と酵母を加えて瓶内に密閉しました。

シャルマ方式では、大きなタンクにスティルワインを入れ、そこに糖分と酵母を追加し、タンクごと密閉することで二酸化炭素をワインに溶け込ませます。使われる容器の名を取って「タンク方式」とも呼ばれます。

この方式は、短期間に密閉したタンク内で造るために、フレッシュなアロマを残して生産できること、また一度に大量生産できることからコストを抑えられることが大きな利点です。

◆ トランスファー方式

瓶内二次発酵方式で登場した「動瓶(ルミュアージュ)」と「滓抜き(デゴルジュマン)」という工程がありました。

動瓶(ルミュアージュ)は、以前は人の手によって行われており、時間と人件費がかかりました。現在では機械化されていることが多いですが、それでも滓が瓶口にたまるまでにはある程度の時間がかかります。

また滓抜き(デゴルジュマン)は、一つ一つの瓶から滓を抜き、ドザージュをして打栓する、という手間がかかります。

トランスファー方式は、瓶内二次発酵から動瓶と滓抜きの工程を簡略化した方法ということができます。

具体的には、スティルワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えて、瓶内で二次発酵を起こさせます。ここまでは瓶内二次発酵方式と同じです。その後、瓶の中身を加圧されたタンクにあけてしまいます。タンクは加圧されているので炭酸が抜けることはありません。タンク内のワインを一度にろ過して滓を取り除き、ふたたび新しいボトルに詰め替え、ドザージュの上打栓します

動瓶や滓抜きという複雑な工程を省くことができ、コストも抑えられるというメリットがあります。

かつ瓶内での二次発酵によって滓との接触による味わいを得ることができますし、複数の瓶内二次発酵したワインをタンクに集めることから、品質やスタイルの平準化も見込めます。

トランスファー方式で作られたワインのラベルには、しばしば「bottle-fermented」と記されています。

◆ アンセストラル・メソッド

発酵している途中、つまりブドウ果汁に含まれていた糖分が全て発酵しきってしまう前に瓶に詰め、王冠などで栓をします。そして、瓶内で引き続き発酵を行うことで、そのとき発生する二酸化炭素をワインに溶け込ませる方法アンセストラル・メソッドです。

リュラル方式や、田舎方式とも呼ばれる最も原始的な泡の獲得方法です。

その原点回帰的な製法が自然派ワインの造り手によって広まり、近年では「ペット・ナット(pét nat=pétillan naturel、自然な弱発泡ワイン、の略)」と呼ばれて人気となっています。

◆ 炭酸ガス注入方式

最も安価なスパークリングワインの製法で、スティルワインに炭酸ガスを吹き込んで造ります。

ベースとなるスティルワインのフレーバーを保ったままスパークリングワインにすることができるという利点がありますが、他の製法に比べると、抜栓した後の泡はすぐに抜けてしまいます

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「Brut(ブリュット)」って何?

ワインの味わいを表現するとき、「辛口」という言葉を使いますね。

辛口といっても唐辛子のような辛さがあるわけではなく、「甘さが少ない」という意味です。そして「Brut(ブリュット)」は辛口と非常に関係が深い言葉です。

◆ ドザージュ=甘味調整

トラディショナル方式やトランスファー方式の説明で、「糖分調整(ドザージュ)」という言葉が出てきました。滓を取り除いたあとのワインを瓶詰めする際に、同時にリキュールを添加する作業のことですが、当然ながらこの時添加するリキュールの量によって、出来上がるスパークリングワインの甘さが変わります。つまりドザージュには、最終的なスパークリングワインの味わいを決める役割があるのです。

◆ 残糖量表示

EUのワイン法では、ドザージュを経て(ドザージュをしない場合もあります)できあがったスパークリングワインに、1リットル当たり何グラムの糖分が含まれているのか、ラベルに表示する必要があります。

しかしいちいち数字で書いていると消費者にとってわかりづらいですから、数値を言葉に置き換えて表示しています。これを「スパークリングワインの残糖量の表示」や、「甘辛度の表示」と呼んでいます。

この残糖量表示で最も広く流通しているのがBrut(ブリュット)」なのです。

◆ 「Brut(ブリュット)」とは

もっとも広く流通しているスパークリングワインの残糖量表示は「Brut(ブリュット)」です)

ブリュットは、そのスパークリングワイン1リットルあたりに「12g未満」の糖分が含まれていることを意味します。

このブリュットという言葉が初めて使われたのは1874年のことといわれています。

フランスを代表するスパークリングワインの生産地、シャンパーニュ

現在も続くシャンパンメーカーであるポメリー社では、1874年、当主であったマダム・ポメリーが初めて辛口のシャンパーニュを考案しました。

当時甘口が主流だったシャンパーニュですが、最大の輸出国である英国で好まれていたのは辛口の味わい。そのためこのマダム・ポメリーの発明した辛口シャンパーニュは、食前や食事中にも広く楽しめると人気を博し、英国での消費量は3倍にも膨れ上がったといわれています。

この辛口シャンパーニュにつけられた名前が「ブリュット」だったのです。

それまでは、ブリュットの一段階上の甘さであるスパークリングワインが「エクストラ・セック」、つまり「極辛口」と呼ばれていました。エクストラ・セックを超える辛口ワインに「ブリュット」と名がつけられ大人気となったので、後に続く生産者もこの名前を採用したと考えられます。

今日ではシャンパーニュをはじめとするスパークリングワインの標準的なスタイルといえるまでに辛口スタイルが定着し、それを表すブリュットという名前も世界のスタンダードになりました。

ブリュット以外の残糖量表示は下記のとおりです。

※ヴィノテラスワインスクール2023テキスト Vol.1より抜粋

現在はブリュットよりもさらに辛口のブリュット・ナチュールや、ノン・ドザージュ(ドザージュしない)が流行しています。これは気候変動によりブドウが熟すようになり、ドザージュの必要がなくなったこともありますが、世界的な健康志向の影響や、シンプルな食文化に合うワインがより好まれている傾向をも示しています。

日本のナイトマーケットでも、女性が飲むシャンパーニュとして糖分添加が少ないものが好まれていますが、これも健康志向の表れとみることができます。つまり糖分を添加していない=太りづらそう、というイメージに繋がっているのです。

こうしてみると、18世紀から現在にいたるまで、時代が下るごとに辛口志向になっていっているように感じられて興味深いですね。

昔はブドウが熟しづらく、ワインの出来がよくなかったときに糖分を添加して甘さでごまかす・・・ということもあったようです。栽培・醸造技術の向上や気候変動もこの辛口志向を後押ししていると考えられます。

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まとめ

今日はスパークリングワインの製法や、甘口・辛口の遍歴について解説しました。

ここで生徒さんの質問をもう一度おさらいしてみましょう!

これからも様々な角度からワインの疑問にお答えしていくので、どうぞお楽しみに!

VINOTERASのYouTubeチャンネルでは、この記事をより詳しく解説した動画を投稿しています。是非チェックしてみてください!

▼先生、質問です!の動画はこちらから▼

参考文献

(一社)日本ソムリエ協会 教本2023

ヴィノテラス ワインスクール ソムリエ・ワインエキスパート試験対策 2023 Vol.1,2

『イギリス王立化学会の科学者が教えるワイン学入門』デイヴィット・バード著、佐藤圭史/村松静枝/伊藤伸子訳、株式会社エクスナレッジ、2022年

『土とワイン』アリス・ファイアリング/パスカリーヌ・ルペルティエ著、村松静枝訳、株式会社エクスナレッジ、2020年

『Understanding wines: Explaining style and quality』Wine & Spirit Education Trust

https://www.champagne.fr/ja

シャンパーニュ委員会

https://pommery.jp/

シャンパーニュ ポメリー

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